加齢によって性欲が減退することはいくつもの研究から明らかにされています。また長年に渡り同じ相手といると興奮しにくくなることも分かっています。
とはいえ長い年月を過ぎたときに性欲がどれくらい維持されるのかには差があります。個人の資質だけではなくカップルの関係性によっても違います。
実は長年一緒にいても性欲を維持しているカップルには自律性と刺激があるということが分かっています。
性欲についてのインタビュー
何が性欲を高めるのか?もしくは減退させるのか?ということを調べた研究があります。リズボン大学のルアナ・クンハ・フェレイラ博士らが行ったものです。
この研究ではカップル32組(平均年齢40歳・平均同棲期間13年)に性欲についてインタビュー形式の細かい聞き取りを行っています。
性的欲求、自律性、親密性などについて質問をし、カップルの関係性や感情が性欲の高低にどう影響するのかを調べたのです。
自律性のあるカップルは性欲が高い
この研究によると性欲の高さに最も関係しているのは「自律性」ということでした。分かりやすくいうと健全な距離感です。
パートナーの他者性を心地よく感じられたり、それぞれが別の趣味を持つなどして離れて過ごす時間のあるカップルは長年一緒にいても性欲を維持できているということです。
このようにべったりし過ぎず断絶もせず自分と相手の感情を上手に切り離し調整できることを「自己分化」といいます。
自己分化はセックスレスの解消にも効果を発揮するとされています。
お互いが自律し感情の境界を意識できていれば飽きにくく相手への性欲も維持されやすいのです。
その他の性欲を高く維持する要因
他に性欲を高く維持する要因として「変化」がありました。
毎日同じ生活の繰り返しでは刺激がなくなり飽きてきます。
するとパートナーとのセックスにもマンネリしやすくなるのです。
しかし日常を打破するような新しい体験をしていると次に何が起こるのかというワクワクを常に得られますから、それが性欲の維持にも寄与します。
刺激的な体験がカップル間の興奮を高めることは他の研究からも分かっています。
他には時間や気持ちの余裕、オモチャの使用、特別なプレイなどが性欲の維持に貢献することが分かりました。
反対に性欲を減退させる要因はストレス、夫婦喧嘩、子供の存在、マンネリ、疲労でした。
性欲や性行動の研究では「自律性」は頻出テーマ
説明してきた通り、今回の研究で最も性欲の維持に貢献していたのは自律性でした。
少し意外に思った人もいたかもしれません。
日本のセックスレスのカウンセリングでは言及されることは滅多にありませんから当然です。
しかしここ数年、他の先進国で発表されている性欲や性行動の研究では「自律性」や「自己分化」は頻出のテーマです。
そして効果も期待できる解消法といえます。
相談に来た人にの中にも自己分化を意識して行動することでパートナーの反応が変わったという人も少なくありません。
セックスレスで悩んでいる人はいきなり話し合ってしまうよりはまず自分の自律性を意識してみてはいかがでしょうか?
自律性と共依存
セックスレスと直接的には関係のない話ですが自律性のないカップルはお互いの感情に影響されすぎてしまうことがあります。
相手が嬉しければ自分も嬉しくなり、悲しければ自分も悲しくなってしまうのです。
一見すると親密で良い関係性のように見えるかもしれませんが、これは健全な関係とはいえません。
相手に共感することは大切ですが感情が伝染し過ぎるのは適度な境界がないことの表れです。
共依存状態のカップルにもよく見られる傾向です。相手の感情に流され過ぎないように注意してください。
参考文献:LUANA CUNHA FERREIRA, PETER FRAENKEL, et al. (2015). Is Committed Desire Intentional? A Qualitative Exploration of Sexual Desire and Differentiation of Self in Couples.